低侵襲・新治療開発による個別化癌医療確立

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林 俊行

林 俊行

慶應義塾大学医学研究科
外科学(脳神経)/微生物学・免疫学

指導教員名:小安重夫、河瀬斌、永井重徳

研究内容

現在、脳神経科学と免疫学とは、いずれも未知の分野が極めて広く、多くの難病の原因となっている。それゆえに最も研究の盛んな分野でもある。しかし、神経系における免疫反応は非常に特殊であり、免疫応答が弱く捉えにくいことからも免疫学者の興味を引くことが少なく、殊に研究の遅れた分野である。中枢神経系の疾患を考えると、自己免疫疾患や感染性疾患を初めとして、悪性脳腫瘍、変性疾患、虚血性疾患、など、発症のメカニズムや治療法において免疫機構が深く関わっており、社会的要請も非常に強い。免疫研究を行う上で、感染免疫モデルは短期間かつ容易に作製可能であり、病態の時間的変化がダイナミックであるため扱いやすく、反復検証もしやすい。Listeria monocytogenesは代表的な細胞内寄生菌であり、微生物学の興味の対象であると同時に、歴史的にも免疫学研究のよい道具として用いられてきた。中枢神経系の免疫機構を研究する上でListeria monocytogenes中枢神経系感染症(以下CNS listeriosisとする)は最も頻繁に使用される感染モデルである。私たちの研究は中枢神経系の免疫反応を解析する事を目的として、このListeria monocytogeneを使用して行った。

(研究成果1)CNS listeriosis の新しいモデルの作製に成功した。
現在までに、これまで文献的に示されてきたリステリア脳感染モデルに、独自の極めてシンプルな改良を加えることで、脳の免疫機構を効果的に発動させ、マウスにおいて脳の感染が治癒する経過を観察できる、新しいモデルを作製することに成功した。(過去のモデルにおいてマウスの免疫応答の活性化が不十分であった原因も解明することが出来た。)
(研究成果2)中枢神経系はリステリア菌による脳実質感染に対して強い免疫機能を潜在的に有することを発見した。
上記のモデルを使用することで、文献的には致死的とされてきた、リステリア脳感染がマウスの脳固有の免疫機構により治癒可能であることを示した。
(研究成果3)獲得免疫によりCNS listeriosisが非常に効率よく制御されることを発見した。
感染時の脳内にCD4+TやCD8+T細胞が浸潤していることを免疫染色とフローサイトメトリーで示した。また、感染前に免疫を与えること(ワクチン)により、T細胞による免疫反応を活性化でき、さらに効率よく感染を排除するシステムが脳にも備わっていることを示した。
(研究成果4)自然免疫のみでも約1週間はCNS listeriosisが制御されうること、しかし菌の最終的排除にはT細胞が不可欠であり最終的には致死的になることを発見した。
T細胞及びB細胞を欠損するマウス (RAG2ノックアウトマウス) を使用して、このマウスに個々の細胞分画を移入する実験系により、このCNSlisteriosisを治癒させる免疫機構がT細胞依存性のものであることも明らかにした。
(研究成果5)CNSlisteriosisにおいて脳に浸潤するT細胞に非常に特異な細胞集団が含まれることを発見した。
獲得免疫において重要であるといわれるのはT細胞受容体αβのT細胞(殆どはCD4またはCD8陽性)であるが、このモデルでは全身にはごく僅かの割合で検出されるのみのT細胞受容体γδT細胞(殆どがCD4, CD8陰性)が脳に浸潤し、さらに感染免疫応答初期に重要であると言われるIL-17を産生する能力があることを発見した。
(研究成果6)ミクログリアの感染免疫における役割を明らかにした。
脳実質固有のマクロファージといわれるミクログリアがリステリア脳感染に際して、非常に効率よく細菌を貪食・殺菌していることを明らかにした。この作用がIFNγ依存性に増強されていることを示した。同時にIFNγは、ミクログリアのT細胞に対する抗原提示能を増強する可能性が高いことを示した。

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